リニエンシーに関するベテラン弁護士の講演
昨日、元FTCの委員で、長く反トラスト法の実務に携わる弁護士の講演を聞いてきた。
自身がかかわった様々な国際カルテル案件(例えばマリンホース事件など)に言及しつつ、リニエンシー制度について、面白おかしく解説してくれた。印象に残った点は、以下のとおり。
- リニエンシーに要するコストが、事業者の直面する制裁を下回るものであることが、リニエンシー制度の成功の鍵である。
- リニエンシー制度に当たってもっとも重要なのは、明確性と透明性である。その点、インドのリニエンシー制度などは、かなり扱いづらい。具体的には、インドのリニエンシー・ガイドラインにおいては、「may」が多用されるなど、競争当局に大幅な裁量が残されており、事業者として、何をすればリニエンシーの適用要件を満たすことができるのか、確実に把握することが難しい。このような制度の下では、リニエンシーを利用しようという事業者のインセンティブが損なわれてしまう。
- アメリカでは、リニエンシーの恩恵にあずかれるのは第1順位の申請者のみ。わずか47分の差でリニエンシーの適用を受けそびれた企業もある。反トラスト法違反の行為を感知したら、全速力で手続を進めるべき。ただし、これだと見込んだ証言者がまともに証言できないといった事態もありうるため、DOJに提出する証拠のピックアップについては慎重さも必要。
- 第2順位以下の申請者は、司法取引による刑の軽減を目指すしかない。したがって、順位が1位でないと分かれば、直ちにpre-negotiationの準備をする必要がある。
- 細かな制度の違いはあれど、EUとアメリカの制度は、ほぼ同じ。
- 国際カルテルの摘発に関しては、INTERPOLの役割が徐々に大きくなっている。