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競争法を勉強中。

PAEによるAppleへの特許侵害に基づく損害賠償請求


Apple ordered to pay $533 million for patent infringement | Reuters


Fresh off $533M victory, Smartflash files another patent suit against Apple

 

- Patent Assertion Entities (PAE)が、Appleに対して特許侵害を根拠とする損害賠償を請求したところ、認容(請求された額からは減額されたものの、それでもかなり大きい賠償額である。)。

- PAEについては、様々な定義があるが、特許を用いて製品・サービスを生み出すのではなく、特許自体を使ってお金を稼ごうとする事業者のことだと考えておけば、とりあえずは良さそう。競争政策上、PAEは、必ずしも否定的に捉えられるばかりではなく、その活動の内容によっては、市場に効率性をもたらすこともあるとされている。

- PAEの訴訟における勝訴率は、極めて低い(8%)。陪審員は、通常PAEの主張に対して懐疑的であるということが、その理由の一つだと言われている。

- 本件 PAEは、二個目の記事にあるとおり、本訴訟後も、連続して特許侵害訴訟を提起しているが、これは、パテントトロールと呼ばれる特許濫用に従事する事業者の一つの特徴であり、社会的コストを上昇させる一方で、それを補償するような価値を提供するものではないだろうと推測される。

- こういったPAEの活動を抑止するために、ある事業者によるPAEに対する特許の譲渡が、当該事業者の競争者のコストを引き上げるような場合には、当該譲渡は競争を実質的に制限するものとして、クレイトン法で規制してはどうか、といった提案がなされている。

State action immunityに関する最高裁の判断


Supreme Court Conservatives Split Over Antitrust Scrutiny Of State Boards - Forbes

 

- ノースカロライナ州は、州法により、歯科医等により構成される州委員会に対して、歯科医業に関する権限を委任していたところ、歯科医以外の者が歯のホワイトニング治療に従事することを妨げ、同市場から排除したとして、FTCが5条違反により審判を開始。ALJ、連邦控訴裁ともFTCの主張を支持。これに対して、州委員会は、Parker判決において提示されたState action immunityに該当すると主張。

- 州が追求しようとする基本的な価値と、連邦法である反トラスト法が守ろうとする価値(自由な競争)が衝突する場合に、いかに調整が図られるべきか、というのが基本的な問題点。

- 最高裁の判示は、以下のとおり。

  • 州が表面的に関与しているというだけでは、State action immunityは認められない。
  • Midcal判決が示すとおり、immunityが認められるには、①州が反競争的な行為を許容するという政策を採用する旨を明言していること、②反競争的な行為について、積極的に監督していることが必要。
  • 州から権限を委任された組織であっても、自己の利益を追求する可能性があることに留意すると、市場の参加者により構成される非統治団体に対してimmunityを認めるに当たり、②の要件が充足されることは必須。
  • 本件では、州による積極的な監督が行われているという事実は認められないため、州委員会によるimmunityの主張は認められない。

(競争と規制の関係を考える上で、参考になる判決だと思う。)

「特許権と競争法をめぐる2013年の状況」(白石先生による解説)

http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201402/jpaapatent201402_105-113.pdf

反トラスト法の動向を含めて、何が問題となっているのか、実に分かりやすく、またコンパクトにまとめられているので、有益である。

最後に言及されている公取委の消極的なスタンスについては、私も同様の感想を持っている。独禁法の審査手続の見直し作業の中で、裁量型課徴金の必要性が強調されていたようであるから、今後は、公取委もそちらの方向を目指して、いろいろとアクションを起こしていくのだろう。

ちなみに、注13にある、Mark S. Popofsky & Michael D. Laufert, "Patent Assertion Entities and Antitrust: Operating Company Patent Transfers"は、必読の論文である。

Blurが新作を!

なんとBlurが新作を出すとのこと。


これはブリットポップ復活の烽火?それとも、新生ブラーの誕生か?12年ぶりの新作、『ザ・マジック・ウィップ』リリース決定!新曲“ゴー・アウト”もここでもう聴けますよ! | the sign magazine

 

グレアム・コクソンが参加するアルバムとしては、なんと16年ぶりらしい。

オアシスも好きだったけど、ブリットポップのあの喧騒を一応(しかも日本でだけど)体験した身としては、Blurの音楽が放っていた独特の輝きが忘れられない。なんというか、ジャケットから想像される甘さはないし、それぞれの曲が持つトーンの変化の激しさも個性的。

また、個人的には、ギタリストのグレアムが本当に好きで、テレキャスではなくレスポールを買ってしまった選択を激しく後悔したことも。「Charmless man」とか、必死で耳コピしたな。

あー、世界ツアーとかやるのかな。見に行きたいな。

ロシアの検索エンジン会社がGoogleの行為について当局に不服申立て(抱き合わせ)


Google faces Russian antitrust complaint over Android app bundling | Computerworld

 

- ロシアの検索エンジン会社であるYandexは、Googleが、Androidのデバイスに自らのアプリをインストールすることを強制することにより、競争者のアプリを排除している行為がロシア競争法に違反するものであるとして、ロシア当局に不服申立てを行った。

- Google Play Appの搭載を望むデバイスの製造会社に対して、他のグーグルの関連アプリを全体としてプリインストールし、グーグルをデフォルトの検索エンジンとして設定するよう義務付け。また、デバイスの製造会社は、Googleの競争相手(Yavexを含む)のアプリを搭載することも徐々に禁じられつつある。

- 実際、Googleと取引関係にあるスマートフォンの製造会社が、同社のアプリ等をプリインストールすることはできないと通知。

- Androidは、ロシアのスマートフォンの86%に搭載されている。

- 本件については、昨年Googleに対する審査を開始した欧州委員会も注視。

Pay for delay訴訟におけるエンフォスーメント(disgorgement)


FTC Defends Disgorgement Bid In Cephalon Pay-For-Delay Suit - Law360

 

- Pay for delayを目的とした和解がFTC法に違反するとして、FTCが訴訟を提起。被告に対して、disgorgement(不当な利益の吐き出し)を求めている。

- FTCの努力にもかかわらず、訴訟は遅延し、和解の効力はいまだ維持されたまま(訴訟が提起されたのは2008年)。被告は、FTCがPay for delayに対する有効なremedyを持っていないと投資家たちに説明しており、同行為による利益を最大化する戦略を取っていることがうかがわれる。

- FTCは、このような状況を打開するために、disgorgementを求めている模様。Pay for delayの合意から得られた不当な利益は、3.5億ドルから5.6億ドルと推測されている。

- なお、FTCは、2012年のstatementにて、disgorgementの活用を限定する旧方針を廃し、適切に活用していく旨を表明している。

リニエンシーに関するベテラン弁護士の講演

昨日、元FTCの委員で、長く反トラスト法の実務に携わる弁護士の講演を聞いてきた。

自身がかかわった様々な国際カルテル案件(例えばマリンホース事件など)に言及しつつ、リニエンシー制度について、面白おかしく解説してくれた。印象に残った点は、以下のとおり。

- リニエンシーに要するコストが、事業者の直面する制裁を下回るものであることが、リニエンシー制度の成功の鍵である。

- リニエンシー制度に当たってもっとも重要なのは、明確性と透明性である。その点、インドのリニエンシー制度などは、かなり扱いづらい。具体的には、インドのリニエンシー・ガイドラインにおいては、「may」が多用されるなど、競争当局に大幅な裁量が残されており、事業者として、何をすればリニエンシーの適用要件を満たすことができるのか、確実に把握することが難しい。このような制度の下では、リニエンシーを利用しようという事業者のインセンティブが損なわれてしまう。

- アメリカでは、リニエンシーの恩恵にあずかれるのは第1順位の申請者のみ。わずか47分の差でリニエンシーの適用を受けそびれた企業もある。反トラスト法違反の行為を感知したら、全速力で手続を進めるべき。ただし、これだと見込んだ証言者がまともに証言できないといった事態もありうるため、DOJに提出する証拠のピックアップについては慎重さも必要。

- 第2順位以下の申請者は、司法取引による刑の軽減を目指すしかない。したがって、順位が1位でないと分かれば、直ちにpre-negotiationの準備をする必要がある。

- 細かな制度の違いはあれど、EUとアメリカの制度は、ほぼ同じ。

- 国際カルテルの摘発に関しては、INTERPOLの役割が徐々に大きくなっている。